今日は曇り。そして肌寒い。
朝、電車を乗り降りする人達で混雑するホーム。
俺も電車を乗り換えるために誰かの後ろを歩き、
人ごみに紛れる。
歩きながらふと顔を上げると、
数歩先を歩いている女性が振り返って何かを見ている。
つられて俺も後ろを振り返る。
白い杖をついている中年の女性がいた。
改札まではまだちょっと距離があり、手前に階段がある。
一瞬迷った後、流れに逆らって戻って彼女に近づいた。
ちょうど階段の手すりに杖をぶつけていた。
躊躇無く、声を掛けた。
「一緒にいきましょう。」
そうすると淡々としたトーンで、
「そうですね。」
彼女は大きな声で答えた。
彼女の左腕の肘の後ろを軽く握った。
少しの階段を上がると改札まで少しの距離だ。
彼女は触っていた肘を嫌そうに、左右に振る。
彼女は、左の腕に鞄を持っていた。
階段を上りきるまで、2、3回、肘を振った。
触れている手を離した。
そして少し距離を置いて、そっと俺は離れた。
心の奥で何かチリチリしてる。。。
何だか自戒の念に囚われる。
お節介だったのかな?
やっぱり通り過ぎればよかった。
もう少し、安心できる様に声を掛ければ良かったのかな?
俺が握るんじゃなくて、握ってもらうべきだった。
それとも荷物でも盗まれるとでも思ったのかな?
少しのこと。
大事なこと。