工藤探偵事務所

Resarch and Investigation

強い者は生き残れない と カジノ資本主義

kudo-shunsaku2010-04-01


また書籍を御紹介させて戴きます。但し、今回はベストセラーという訳で話題の書籍という訳でもなく、たまたま気になった本なので御座いますが、「強い者は生き残れない」というタイトルです。

Introduction of the Book

本書の序文の終わりにこう書かれています。

『強いものが生き残れるのではなく、環境変化に対応できたものだけが生き残るのだ。』
トヨタショックの際に、読売新聞に掲載された文言です。

新潮選書 強い者は生き残れない 環境から考える新しい進化論 (単行本)
吉村 仁 (著)
単行本: 251ページ
出版社: 新潮社 (2009/11/25)
ISBN-10: 4106036525
ISBN-13: 978-4106036521
発売日: 2009/11/25

新潮選書 強い者は生き残れない 環境から考える新しい進化論

新潮選書 強い者は生き残れない 環境から考える新しい進化論

"ツヨイモノハイキノコレナイカンキョウカラカンガエルアタラシイシンカロン 強い者は生き残れない―環境から考える新しい進化論―"

このタイトルが何かに掛けた比喩という訳ではなく、まさにダーウィンの進化論に対峙するような生物学の論理です。では何故、興味を惹かれたのかと言えば、とある書評にこうありました。

『なぜ生き物が競争以上に協調を尊ぶのか。
 と同時に、改めて確認した。
 経済学というのは生物学の一部門なのだ、と。』

404 Blog Not Found:適所あっての適材 - 書評 - 強い者は生き残れない

それは、進化において今まで最も不可解だった「協調」という行為が、まさに進化論によって解釈可能であることを意味しています。更には個の生存を最優先する筈の生命体が、寄生が共生となるような事象も説明出来るのでありましょう。更に拡大解釈すれば人間は、何十兆個で構成される細胞の塊でありそれは一つの共生された社会を形成しているとも云えます。それは遥かな昔、単細胞の生物であるからです。

普遍的な事象であります。

この書籍の書評では、更にこれを人間社会にも当て嵌めて考えています。そのプロットは成立すると思います。また協調は環境が「敵対的」であればあるほど価値があり、逆に環境が「友好的」であれば、個は利己的にふるまえる、と言っています。著者の表現は本書をお読み下さいませ。

生物学こそが、社会行動学や経済学の根源であるとも言えるのでしょう。つまりは、人間を知るということに帰結するかと想います。

因みに、小泉元総理も引用した有名な言葉で、

| 「最も強い者が生き残るのではない。
| 最も賢い者が残るのでもない。
| 唯一生き残るのは変化する者である。」
| (チャールズ・ダーウィン

というフレーズの文言がありますが、厳密にはダーウィンが、その著書である「種の起源」でそんな事は書かれてないそうです。まぁこれが流布したのは誰かの意図的な拡大解釈なのか、伝言ゲームなのかは不明ですが。

http://members.jcom.home.ne.jp/natrom/koizumi.html

種の起原〈上〉 (岩波文庫)

種の起原〈上〉 (岩波文庫)

種の起原〈下〉 (岩波文庫)

種の起原〈下〉 (岩波文庫)

Contents of the Book

ご参考までに目次を以下に記載しておきます。
目次 - 吉村仁『強い者は生き残れない―環境から考える新しい進化論―』
| まえがき
| 第一部 従来の進化理論
| 第一章 ダーウィンの自然選択理論
| 第二章 利他行動とゲーム理論
| 第三章 血縁選択と包括適応度
| 第四章 履歴効果
| 第五章 遺伝子の進化と表現型の進化
| 第二部 環境は変動し続ける
| 第六章 予測と対応
| 第七章 リスクに対する戦略
| 第八章 「出会い」の保障
| 第九章 「強い者」は生き残れない
| 第三部 新しい進化理論――環境変動説
| 第十章 環境からいかに独立するか
| 第十一章 環境改変
| 第十二章 共生の進化史
| 第十三章 協力の進化
| 第十四章 「共生する者」が進化する
| あとがき
| 参考文献

Casino Capitalism

最後にこれまた人間社会にも当て嵌めて考えたものですが、『「カジノ資本主義」が冷戦中には登場しなかったのかが、これですっきりと説明できる。』という書評もありました。

カジノ資本主義とは、現代資本主義は変動為替相場制へ移行して以来、外国為替や資本収支などの国際金融や国内外での金融取引において、あたかも巨大なカジノの賭博場への参加者のごとくマネーゲームを興じている様子を表現したもの。イギリスの経済学者スーザン・ストレンジ(Susan Strange)の同名著作(1986 年刊)から。

http://warc.ch/pc/02.html


カジノ資本主義 (岩波現代文庫) (文庫)
スーザン ストレンジ (著), Susan Strange (原著), 小林 襄治 (翻訳)
文庫: 356ページ
出版社: 岩波書店 (2007/03)
ISBN-10: 400600172X
ISBN-13: 978-4006001728
発売日: 2007/03

カジノ資本主義 (岩波現代文庫)

カジノ資本主義 (岩波現代文庫)

"■カジノ資本主義(スーザン・ストレンジ 岩波書店 1988)の書き出しと終わりの部"

この本を書いた著者であるスーザン・ストレンジロンドン大学名誉教授)は既に亡くなっているそうです。この変わった名前の先見の明のある方は、五人の子供の母親だったそうです。ご冥福をお祈りします。

http://www.nikkeibp.co.jp/archives/046/46583.html

カジノ資本主義』の著者として知られる英国の学者スーザン・ストレンジロンドン大学名誉教授)が、10月25日死去した。自宅で静かに迎えた最期だったためかメディアは長く気づかず、訃報は随分と遅れて出た。

Susan Strange - Wikipedia

Professor Susan Strange (June 9, 1923 - October 25, 1998), Montague Burton Professor of International Relations. 1978-1998


どんどん興味が拡散*1してしまいましたので、この辺でお終いにします。

*1:-拡散波動砲。白色彗星帝国戦では無力でした。-